がんばれ!!小さき生命たちよ―村田修一選手と閏哉くんとの41ヵ月

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出産は奇跡だ。この言葉はマンガ「コウノドリ」の主人公、鴻鳥サクラのセリフである。

昨年、妻が第一子を出産し、父になった自分が我が子と対面したときに頭に浮かんだののが冒頭の言葉だった。当たり前の出産はなく、母たちが身体を、精神を削り、命をかけて出産する。そして、出産は思い通りにならないことも多く、コントロールすることができないものだ。妊娠38週目で我が子が生まれ、母子ともに健康であったが、予定外の緊急出産であった。病院に定期検診で訪れたところ、赤ちゃんの心拍が数分間低下する原因不明の現象が見つかった。酸素の供給が正しくできていない可能性があり、即時出産が望ましいとの判断になり、急遽その日に帝王切開を行い、我が子の誕生に至った。この時の妻の心境は僕の想像の以上に不安でいっぱいであったと思う。医者によると心拍低下の原因として考えられるひとつに、臍の尾が首に巻きついていたために酸素の供給がうまくできなったことを挙げられたが、断定はできずあくまで考えられるひとつであり正確な原因は不明である。その後の検査で異常がないことが確認されたので、予定どおり1週間後に退院することとなり、現在に至るまで後遺症もなく元気にすくすくと成長して、もうすぐ1歳の誕生日を迎えるまでになった。これが僕たち夫婦の初めての出産の出来事だ。改めて思う。出産は奇跡だと。

子を持つようになってから、育児や出産に関する記事をよく読むようになり、その中のひとつで神奈川県立こども医療センターのNICUの現場の医師たちによるブログをよく読んでいる。NICUとは新生児特定集中治療室のことであり、新生児に特化したICU(集中治療室)のことである。NICUで起こる出来事、NICUの子どもたちのこと、そしてNICUを卒業したあとの子どもたちの話、NICUに関わる医療と医者の話が日々書かれている。

もし、自分の子どもが早産で体重1000g未満で誕生していたら、NICUに入っていたかもしれない。出産に絶対がない以上、その可能性はあった。そう思うと、とても他人事とは思えなく、新生児医療の現実を知りたくなった。知るべきだと思った。

そのブログの中で度々紹介されているのが、本書「がんばれ!!小さき生命たちよ―村田修一選手と閏哉くんとの41ヵ月」である。プロ野球選手の巨人、村田選手のお子さんは早産により712gで生まれ、 NICUに入院することになった。そこで感じた村田選手の新生児医療の現実やNICUのこと、自身の出産育児に関することが書かれている。また、後半では入院先であり、お世話になった神奈川県立こども医療センターの新生児科の医者、豊島勝昭さんが筆をとり、新生児医療の現実を書かれている。数名ではあるがNICUに入院した子を持つ母たちの生の声も数ページにわたり収録されている。

読後、僕自身の出産に対する認識の甘さを痛感した。どこかで出産がゴールだと妻が妊娠しているときに思っていた。華やかなゴールテープさえ切れればなんとかなる。でも、そうじゃない。読み進めるなかで何度も「もし、自分のこどもだったら」と頭をよぎった。自分のこどもが健康だったから良し、ではなく、子を持つということの責任を改めて感じたし、健康であったことに感謝し、だからといって健康でなかったとしても、それがただただ不幸として受け止めるのではなく、笑顔で家族が前に進んでいけるような家庭を築いていくためにはどうすればよいのかと広い意味で考えるきっかけになった。

NICUは赤ちゃんの闘病の場ではなく、成長の場である」。本書に書かれているこの一文が僕は好きだ。成長の場であるNICUがあることで助かる命がある。その命のリレーを絶やさぬように新生児医療に自分ができることを見つけていきたい。一人でも多くの子どもが笑顔でいられるように何ができるか。そう考える年齢になってきたと思う。次の世代に対して自分ができることをやっていきたい。